気になるニュース:未婚のシングルマザーについて

朝日新聞の連載記事で、選択的シングルマザーになった方へのインタビューが載っていました。
【平成家族】パートナーいない、でも「子ども欲しい」 迫るタイムリミット 「1人で産み育てる」も選択肢に Yahoo!ニュースへのリンク)

今回はこれについて考えてみます。

 

 

選択的シングルマザーは身勝手なのか

私の周りでも、理由を問わなければシングルマザーの方はちらほらいますが、大抵は夫と離婚した方で、最初からシングルマザーを選択した人はほとんど知りません。唯一、昔仲の良かった友人がこれに該当しますが、父親からは(責任をとって?)結婚したい旨を伝えられていたそうですが、あえてその道を選んだということです。

こうした選択的シングルマザーについて、この記事のコメントでは多様性を理由に擁護する意見はありつつも、母親の“身勝手さ”をあげる方が多かったのが印象的でした。

確かに、ただでさえ大変な子育てを一人で行うことは相当な労力です。
また、いくら手厚い補助があるとはいえ、経済的な面でもハンデを負う可能性も高いでしょう。そのために子どもと向き合う時間が減ってしまうことも大いに考えられます。

 

しかし、本当にこうした人々は身勝手なのかと言われれば、私はそうは思いません。
ちらほらあった、子どもの父親を欲しいと思う権利をないがしろにしている、といった主張もあまりピンときませんでした。

こうした生き方に否定的な意見が多いのは、子育ては結婚した夫婦が揃って行うものという凝り固まった、崩しにくい価値観があるからだと思います。そして、そこから逸れた生き方について、親が良くても子どもが可哀想という一方的な同情を感じる人が多いのかもしれません。

ですが、子どもが家庭環境にどのような意味づけを施すかは子ども次第です。
私は奨学金や授業料免除の相談を担当していたときに一人親家庭で育った多くの学生と接しましたが、親に感謝して少しでも負担を減らそうと前向きな学生がいる一方で、家庭環境を理由に半ばふてくされ、自分は被害者なんだから救ってくれという態度をとる学生もいました。後者のような学生は、自分が幸せになれない理由を家庭環境のせいにして逃げているのだと思いますが、それを助長するのが、こうした周りからの一方的な同情なのかもしれません。

 

親が一人しかいなくても、一緒に接する時間が限定されても、親は愛情を伝えることはできますし、子どももそれを理解することができます。
子どもは、親と違って家庭環境を選べないかもしれませんが、それをどのように解釈するかを選ぶことは可能です。それに口出しするのは、子どもを無力で自分では意思決定ができない存在として捉えているからこそおきるのであって、そこには子どもに対する尊敬が一切ないことに注意すべきではないでしょうか。

 

考えるべきはニッポンの子育てのありかた

私は“今”このテーマで考えるべきは、シングルマザーの是非ではなく、社会や男性の子育てに対する姿勢なのだと思います。

昨今、日本では一億総活躍社会と称して女性の社会進出を高めることを目指していますが、社会整備や男性の協力が追い付いていないせいで、女性に“産めよ・働けよ・子育てせよ”と無理難題を突き付けている状況です。一人の女性ができることには限りがありますから、子どもが欲しくても仕事をとるケースや、反対に子育てを優先するから働けないケースがかなりあると思います。

記事中に多様な家庭環境が認められている国の参考としてフランスがあがっていましたが、同国では政府が男性の育休取得を促進したり、保育園の簡素化などによって働く女性の負担を軽減し、子育て環境を充実させたことで子どもを生む女性が増え、結果、出生率が上昇しています。こうした整備が追い付いていないにも関わらず、日本で選択的シングルマザーを選択する人は、相当な覚悟をもっている方だと思いますし、そんな女性たちにこれ以上“偏見という負担”をかけるべきではありません。

 

フランスでは女性の“社会の育児環境整備”や“男性の育児参加”へのあきらめから、こうした選択的シングルマザーが広がったという見方があるそうですが、現在の日本もまさに同じ状況なのではないでしょうか。
女性たちの静かな主張を機に、日本でも育児のしやすい社会を構築すべきですし、我々男性は育児(家事を含め)参加への認識を改める必要があるでしょうね。

このテーマは“多様な家庭の在り方”として論じられやすいのかもしれませんが、まずは、働きながらでも、一人でも子育てを行えるという前提条件を満たす必要があります。それによってはじめて“選択的”なシングルマザーと言えるでしょうし、多様な家庭の在り方を論じた先には、恐らくこの“選択的”という表現もなくなっていくのではないかと思います。

 

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