気になるニュース:「セルフ父の日」商戦本格化

SankeiBizによると、世のお父様たちが「父の日」に父の日ギフトを自分で買う「セルフ父の日」と呼ばれる現象がじわりと拡大中で、百貨店が商戦を繰り広げているとのことです。
百貨店、「セルフ父の日」商戦本格化 需要に照準、客層の拡大目指す Yahoo!ニュースへのリンク)

今日はこのニュースについて考えてみます。

 

 

世の父親は不幸自慢が大好き

第一生命が実施するサラリーマン川柳では、必ずと言っていいほど“妻や子どもに虐げられてる可哀想なオレ”という句が上位にランキングしていますが、今回のニュースではこれを狙った意図を感じました。

つまり、“可哀想なオレ”という層が沢山いて、こうしたニュースに興味がある・受けるだろう、という発信側の狙いがあるように感じられたということです。

私は、こうした“可哀想なオレ”が共感され、大きな勢力になっている(と認識されている)ことに、一抹の不安を覚えます。
ただ面白おかしくやっているようで、あまり健全な状況ではないと思うからです。

 

私が非常に感銘を受けた本に“嫌われる勇気”と“幸せになる勇気”というものがありますが、それによるとあらゆる問題行動は5つの段階に区分されるということです。具体的には、1.承認欲求→2.注目喚起→3.権力争い→4.復讐→5.無能の証明です。
私もまだ100%理解できているわけではないのですが、これを父親で例えるならば、こういう感じになると思います。

 

結婚してすぐ、あるいは子どもが小さなうちは、父親は家庭という共同体の中で特権的な地位、つまり一家の大黒柱として家族からの注目を浴びています。ところが、結婚生活に慣れてきたり、子どもが家族以外とコミュニケーションを持ち出すと、父親に対する家族の注目は薄れていきます。

こうしたとき、父親が家族からの注目を浴びるために、いわゆる家族サービスに励んで家族からの注目を集めるための行動をとるとします。これが、第一段階の“承認欲求”です

一見家族思いの優しい父親に見え、問題など無いように思えますが、行動の目的が“注目を浴びる”こと、つまり承認されたいということからきていることが問題なのです。

 

こうした目的による家族サービスは、家族からの感謝を求めています。最初のうちは「パパありがとう」という言葉をもらえるかもしれません。ですが、家族というのは厄介な代物で、有り難いことにもだんだん慣れ、やがて当たり前になってきます。

父親は感謝されなくなると、家族サービスをしなくなるかもしれません。それは、父親の目的が家族への純粋な貢献ではなく、家族からの承認だからです。
そして感謝されなくなった父親は、次第に優等生パパではなく“落ちこぼれパパ”として家族からの注目を集めるため、だらしない父親を演じたり、いわゆるフラリーマンとなったりして、家族という共同体の中で特別な自分を確保したがるようになります。これが、第二段階の注目喚起です

 

私は、“可哀想なオレ”たちは、この層にいる人たちではないかと思っています。
積み重なった家族からの非承認(無反応)は、やがて父親に大きな劣等感を抱かせます。
その劣等感を打破できない父親たちの一部は、家族からの“仕打ち”を不幸なものであるとし、そのことによって特別な地位の自分を見出そうとするのです。いわゆる不幸自慢です

この特別な地位にいるためには、常に不幸を必要としなければなりません。
つまり、家族は父親に対してひどい“仕打ち”をしてくる存在でなければならなくなってしまいます。
これでは父親は永遠に幸せになることはできません。

 

“ご褒美”は人からもらうもの

セルフ父の日に見られる“自分へのご褒美”は、自ら自分を承認するという心理に基づいて行われていると思います。
これ自体は健全な思考ですが、そのご褒美の内容が問題なのです。
物やお金、相手からの感謝の言葉といったものによって自らを承認することは、裏を返せばそういった見返りを求めているということです。これは、先に述べた問題行動の入口に差し掛かっているのではないかと思います。

文中で紹介した本によれば、幸せの本質は貢献感にある、とされています。
つまり、本当の“自分へのご褒美”は、家族のために頑張ったという貢献感によって、既に得られているはずなのです。
こう書くと「じゃあ父の日に何も贈らなくていんだよね」という話になりますが、極論を言えばそうです。

ただ、家族が感謝の気持ちをメッセージやモノを贈ったりして示すことは自由だと思います。
貰えなくても既に幸せだけど、感謝してもらえたらもっと嬉しい気持ちになる。
純粋に相手を喜ばせるために贈るのが“ご褒美”だと思うのです。

 

有り難いことに、今年は家族からメッセージの“ご褒美”をもらいました。
今後年を重ねるごとにどうなっていくかはわかりませんが、承認ではなく貢献によって、家族と接することを心がけていきたいですね。

 

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