大阪医科大学の元パート職員が、職務内容は正職員に準ずるのに給料(手当)が不当であったとして格差是正を訴えていた裁判で、大阪高裁でこれを認める判決が出されました。
内容的に、大学関係者には戦慄が走ったと思いますので、このことについて記事にしてみたいと思います。
大学では正社員バリに仕事をしているパートさんは大勢いる
今回の判決は、正社員の賞与の算定が業績や年齢とは関係なく一律であったことを根拠に、「働いた時間のみ」を根拠に支出していると判断し、フルタイムに準ずる当該者がこれを受け取れないのは不合理だと判断されたということです。
他の業界では分かりませんが、大学業界では、9時-17時のフルタイムパートさんは、結構います。
そして大学業界では、パートさんは補佐的な業務をしているとはいえ、正社員に明確な業務が課されていない以上、正社員との明確な区別はつけずらいのが現状です。特に仕事ができない人、干されている人などは、その傾向が強く出てきます。
そんな中で、優秀なパートさんなどには、業務が回ってしまうのはある意味仕方がないのかもしれません。
異動によって業務内容が一気に変わるのも相まって、「パートさんに教えていただく」ことは日常茶飯事だったりします。そんな意味で、正社員の意味は何かといわれると、返答に困る部分はあると思います。
大学特有の賞与一律支給
また、これは大学ならではですが、賞与が一律で支給される。これも課題でしょうね。
多くの、というよりほとんどの大学が正社員の賞与については一律支給だと思いますので、今回の判決を重く受け止めている方は多いと思います。
大学職員は一部の部署を除いて営業成績などがありませんので、基本的に賞与で差をつけるという考えがありません。そのため、自ずと一律支給になるのですが、それがこうした「勤めた時間への支給」としてみなされてしまうわけですね。
時間のみが考慮の条件であれば、確かになるほど、パートさんでも対象になるのは合理的です。
これで果たしてみんなHAPPY?
ただ、この判決でメリットを得るのは、原告以外にあるのかというのが疑問です。
確かにパートさんで不満を感じている方はいるとは思いますが、私の知る限りパートさんの多くは、いわゆる103万円の壁などの収入を気にされながら勤務されている方が圧倒的です。
そんな中で賞与が支給されるとなると、この調整が極めて難しくなってきます。ただでさえ、夏休みなどは勤務が免除されるケースが多い中で、これ以上勤務時間が短くなるのであれば、直接雇用のパートではなく派遣で…という流れが加速するでしょう。
今回の判決で留意すべきは、パートさんに対して、正社員と同等の仕事内容を押し付けていた、という点にあるでしょうね。ただでさえ曖昧な職務内容の大学職員。上長によっては、できるパートさんに基準以上の仕事を任せているというケースは想像に難くありません。
そんな戒めとしてこの判決を受け止めるのと同時に、賞与の支給基準を簡単に変えれない状況を鑑みれば、今後は大学での直接雇用が減少していくことは予想されます。
それが果たして、原告の言う「非正規の人が働きやすくなる」きっかけになるかどうかは、未知数です。
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