この週末に某ショッピングモールに行った際、無料がらがら抽選会が催されており、子どもたちが「わーっ」と行ってしまったのですが、がらがらの対価はアンケート(無記名・住所不要)に答える、というものでした。アンケートくらいなら…と軽い気持ちで席に座ったのが運の尽きで、結局20分近く、太陽光発電に関する説明を延々と聞かされる羽目になりました。
今回はこの体験を元に、太陽光発電はアリなのかナシなのか、考えてみたいと思います。あっ、もちろんがらがらは全て白玉(参加賞の駄菓子)でした!
太陽光発電で勝ち馬に乗る?
最初は、エコに関する意識調査、住宅のタイプ(一戸建てか否か、屋根の構造など…この時点で察するべきでした)などを問うアンケート用紙を渡され、これにチェックを入れていく形でアンケートが始まりました。
「すぐ終わりそうだな」と思っていたのですが、すべてのチェックを終えた時点で、いきなり「クイズちゃーんす!」とやたらとテンションの高い人に係りの人が交代しました。なにやら、クイズに正解するとがらがらを回せる回数が増えるとか。これには子どもたちも興奮です。
非常にめんどくさかったのですが、乗りかかった舟ですので、クイズに参加することにしました。お題は3問で、全て太陽光発電の設置を意識させるようなものでした。具体的には、1.日本の火力発電による発電量の割合、2.太陽光発電の設置件数、3.ZEHとは何の略か、というものです。
ある程度の段階で太陽光の話だなと察しがついたので、一体どんな風に販促してくるのだろうと聞いていたのですが、クイズに沿って以下のような論理展開を広げられていました。
1.日本の火力発電による発電量の割合→80%以上
原発の停止によって原価の高い火力発電の割合が高くなり、それが電気料金に転嫁されている、という説明があり、それを示す電気料金の右肩上がりのグラフを見せられます。最近電気代高いのはそういうことですよ、という知識の提供から始まります。
2.太陽光発電の設置件数→220万戸程度
太陽光発電がずらりと並んだ航空写真と、そうでない写真を見せられ、都市部などの遮蔽物が多いところは設置件数が少なく、(私たちが住んでいるような)郊外では多いというイメージを持たせられます。その後、太陽光発電が設置されたのは、去年が最も多いことを説明され、その理由は「再エネ発電賦課金等」の負担額の増加によるという見解が示されます。
再エネ発電賦課金等については私も詳しくなかったのですが、要は太陽光発電などの、費用は掛かるがエコな発電を支援するために、その費用をみんなで負担しましょう、という制度です。これが、2012年導入当初から現在までで90倍以上になっているグラフを見せた後、経済産業省の試算では将来的にこれがさらに4倍越えになるという試算結果の記事を見せられます。
そして、損をしたくないという人の心理(以前みた記事によると利益に対して3倍程度の負荷があるそうです。100円損したたときのダメージを解消するには、300円相当の利益が必要とのことで、人は損することに敏感ということです。)に付け込んで、再エネ発電賦課金等は太陽光発電を設置している人への売電収入の源泉になっており、どうせなら払う側じゃなくてもらう側にならない? 太陽光を設置する人が増えれば増えるほど損が増えていきますよ!と不安を煽ってきます。
3.ZEHの略称は→ゼロ・エネルギー・ハウス
最後は締めくくりとして、2020年より新築住宅は原則ゼロ・エネルギー・ハウス化しなければならなくなり、お子様が家を建てる時には太陽光発電が義務ですよ!という落とし文句と共に、長いクイズは終わりました。
こうして、高くなっていく電気料金は太陽光発電をしている人のためであり、支える側じゃなくて支えられる側になったほうが損をしませんよ、今後は当たり前になるから、早い方がいいですよ、というイメージを植え付けられれば、この会社としては成功なのでしょう。
これらの説明、パッとみて正論のようですが、果たして本当なのでしょうか。
太陽光発電は投資案件として微妙
経済産業省のエネルギー白書2018によれば、2016年の発電量の内訳は以下の通りで、再生エネルギー等6.9%、水力7.6%、原子力1.7%の合計は16.2%、残る83.8%が火力発電ということになります。したがって、1.の業者の説明は正しそうと言えます。(まぁ前提知識の提供なので、間違ってたら問題ですが…笑)
問題は2.です。
再エネ発電割賦金等は電気利用量に比例して決められますが、新電力ネットによると平成24年(2012年)は0.22円/kWhだったものが、平成30年(2018年)では、2.90円/kWhと約13.5倍に膨れ上がっています。(一般家庭で年額800円程度の負担が10,500円程度へ増加)確かにすごい伸びではありますが、業者の見せた90倍はちょっと盛りすぎか、何かを拡大解釈している可能性がありますね。
また、将来これが4倍になる!という試算は恐らくこのペースで割賦金が増えていけば将来的にそうなる可能性がある、というもので、必ずしもこれが我々の負担となる訳ではないと思います。
資源エネルギー庁の「2030年以降を見据えた再生可能エネルギーの将来像(自立化に向けて)」によれば、世界各国とも割賦金の増加に歯止めをかける制度打ち出していますし、日本においても自立化を進める(=割賦金に頼らない)のが方向性で、そのための根拠としてのデータが「このままいくと4倍になりますよ」というものでしょうから、これをもとに不安を煽るのは少し汚いですね。
次に、太陽光発電は投資対象として魅力的かどうかを検証してみます。最大限に上手くいくパターンを想定して、太陽光発電の導入を推奨しているタイナビというサイトの導入例をみてみます。このサイトのシミュレーションによれば、初期費用は156万円、それに対して10年間の売電収入は148万5,150円、10年間の電気代節約額が49万2,770円で、トータルで41万7,920円お得というものでした。年間4万1,792円の節約になるということで、これは概ね今回業者の提示した、将来的にさらに4倍になるという再エネ発電割賦金等の増加額に合致してきます。うまいこと出来てますね。これで増加分をカバーしましょうと丸め込むわけです。
ところで、156万円が10年で42万円を生むということは、年間2.7%の利回り(単利)相当の投資と言えると思います。手取りでこれなら悪くないと思われるかもしれませんが、太陽光発電にはシミュレーション通りの日照条件に合わない可能性、天災に遭うリスク、経年劣化による整備費用の発生、買い取り額の変動といった不安要素が付きまといます。
これに対して、例えば米国債はどうでしょうか。10年物の米国債は最近利回り3.24%を記録しましたが、確定申告でアメリカ側の税金を取り戻せば、手取りでの利回りは2.6%。上記のリスクと、アメリカが転覆するリスクを比べると、後者の方が安心できませんか?
もちろん、太陽光発電装置が10年以上持つ可能性、米国債は為替リスク(プラスになることもありますが)があることを考慮すると、必ずしも米国債が優れているとは言えませんが、太陽光発電を投資案件とみると、ほぼノーリスクの投資と比べて、リスクが高すぎる割にリターンは乏しく、投資妙味に欠けないか、と思うのです。
それだけのリスクをとれるのであれば、例えばS&P(アメリカの日経平均のようなものです)に連動するETFを買っておけば、これまでの実績から年間8%近いリターンが見込めますし、10年後も腐ることは考えにくいです。
最後に3.ですが、将来的な新設住宅におけるZEHの義務化(太陽光発電装置の設置標準化)は正しそうですが、日照条件や積雪量を考慮したNearly ZEH、都市部の狭小地などで太陽光発電システムを搭載しないZEH Orientedなどの抜け道は用意されるようです。
そもそも、一戸建て住宅に住むかどうかも微妙な上に、最近の太陽光発電の設置コストの低下はすごいですし、将来的には高エネルギー変換率のパネル(神戸かどこかの大学で60%以上とか開発してるみたいですね)が生まれる可能性もありますから、いま設置する必要は感じられません。
以上から、業者の説明には納得しがたく、太陽光発電を地球環境のためとか、エコ教育のためなどの目的で設置するならアリかもしれませんが、単純な投資案件としてみると個人的には完全にアウトな内容だという事がわかりました。
まとめ
今回、アンケートで時間を浪費させられましたが、その後本記事を書くにあたって太陽光発電について調べ、関心を持ったことは収穫だったかもしれません。
ここまで太陽光発電について否定的に書いてはいますが、太陽光発電の潜在的な価値は相当高いです。シンギュラリティの到来でよく言われるのが、太陽光発電によってエネルギー問題が解消するというもので、高変換率パネルの登場によってエネルギーの無償化が実現する、と言われています。
将来的には設置を検討してみたいところではありますが、現在はまだまだといったところだと思います。
これから住宅を購入する方で、設置を検討している方はよくよく検討の上ご判断なされるとよいと思います。特に、住宅購入時は金銭感覚が狂いますから、慎重で合理的な判断が求められます!
そんな方に本記事が参考になれば幸いです。
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