大学職員の窓口業務と電話対応ーマルチタスクなんて幻想です!ー

大学職員は様々な部署に配属される可能性がありますが、主に学生・生徒(志願者)と接する部署は“現場”と呼ばれて、総じて忙しい部署だよね、という認識があります。

今回は現場がなぜ忙しいかについて、窓口業務に焦点をあてて書いていきたいと思います。

 

 

現場では若ければ若いほど忙しい

私は新卒で学生課に配属されたのですが、新人はまずは現場へという風土がある職場ではなく、私の同期で現場と管理部門の配属割合は半々くらいでした。基本的に、大学では人員計画というものを頭数で見ますので、穴の出た部署に穴埋めしていく形で配属を割り当てます。ヘッドハンティングした人でない限り、個人の能力なんて見ていません。

そんな風に配属された学生課では、当然一番年下で、様々な雑務が回ってきました。当時の上司の「始業前に先輩の机を拭いておけ」という指示は無視していましたが、先輩たちの読み合わせの相手、荷物運搬、説明会などの会場整備など、知識がなくてもできる仕事はどんどん回されました。

ですが、大学職員は基本的に仕事が縦割りで、私も早い段階から奨学金担当として自分の担当を持つようになりました。すると、途端にその業務に関してはアナタね、ということでその職務をほぼ丸投げされます。まだまだ知識も経験も浅い上に、雑用はどんどん頼まれて、ただでさえ忙しいところに拍車をかけているのが、タイトルにある窓口業務と電話です。

そう、新人は大抵の場合、窓口の最前列に座らされ学生が来たらいの一番で対応することが求められ、電話も誰よりも早く出るのが暗黙の了解のような風土があるのです。

 

窓口と電話による業務の中断は本当にめんどくさい

私はマルチタスクをすべきだという主張は、無謀な量の仕事を押し付ける方便だと思っていて、実際にマルチタスクは生産性を大きく減退させるという論文も発表されています。他にも、何かのニュースで、電話1本で集中力が何割もそがれ、回復するまでにかなりの時間がかかる、という調査結果も見たことがあります。

せっかく集中していても「落とし物をしました」とか「教室はどこですか」みたいな些細なことで窓口と席を往復することが頻繁にありますし、授業料の相談などは別室で一人1時間以上話を聞くこともありますので、業務は一向に進みません。

電話についても、担当以外は正直分からないことが多いのですが、「とりあえず話を聞け」という上司の方針の元、よく分からない話を延々と聞き、結局「折り返します」と断って、担当にメモを渡すということが非常に多かった記憶があります。

もちろんこうした経験が、他の仕事への理解の促進や、学生に顔なじみになってもらえたり、雰囲気が分かるなどのメリットはあるのかもしれません。ですが、実際問題、自分の不得手な電話も受けつつ、いつ来るかわからない学生の対応に身構えながらでは、担当業務に集中して取り組むなどできるはずもありません

新人は苦労させ分育つというのは幻想で、こういった割り振りは、単純に業務配分の要領が悪いのだと思います。

 

最近は変化の兆しが出てきた

私は昔から、現場においても窓口(電話含む)とバックオフィスの分離を主張してきたのですが、上司陣には上述したような苦労してなんぼ精神が根強く、なかなか受け入れてもらうことができませんでした。

ところが、最近は改善の兆しが見え始めています。もっとも、職員の業務改善のためというよりも、主に経費削減の面からです。

正直言って窓口業務も電話対応も、専任職員へ支払う給料を考えると相当分の悪い仕事です。新人ですら年収500万弱の大学もありますし、税金の折版や研修代なども考慮すると、その2倍は人件費としてかかっています。

1000万あれば、9時‐17時常駐の派遣スタッフを3名雇うことができます。そして実際、既に私の大学ではこうした方々が国際交流や情報関連の部門、図書館などの業務を請け負っています。

 

固定費の流動化は、今の大学の最大の関心事で、コンサルティング業界も目をつけています。手の付けやすいのは本務から独立している図書館、情報、国際交流、給与計算あたりですが、いずれは就職支援や学生課などの現場部門にも及んでくると思います。

専任職員だからといって大学のすべての業務に精通する訳ではありませんし、一度異動したら生涯関わらないこともよくあります。そんな役に立つかどうかわからない知識や経験の蓄積にお金を払うより、一定のパフォーマンスを確実に提供してくれる方にお金を払うほうが合理的という話です。

現場を理解したり、幅広い業務経験があると管理職になったとき役に立つというのも幻想だと思っていて、管理業務は現場の仕事の延長線にあるのではなく、まったくベクトルの異なる業務なのではないでしょうか。確かに一部は活かされるでしょうが、費用対効果に合わないということです。今の大学に、臨定時代(団塊の世代を受け入れるために、時限的に多くの学生を受け入れてよかった時代です。教職員数は増えませんでしたから、収入のみ増えてウハウハでした)のような余裕はもはやないのです。

 

じゃあ専任職員は何するの?という話ですが、いわゆる企画・創造的な業務に集中していくことになるのでしょう。他にも、教職員学生と3つの異なる属性の人々が集う大学の特性上、その調整役としての役割もますます重要になりそうです。

そして、その人数は教員のように大学設置基準で定めがない(教員は学生数に応じで何名以上配置すべし、というのがあります)以上、どんどん減らされていくでしょうね。

ということで、今後、大学職員はますます狭き門になるのではないかというのが中長期的な展望です。もっとも、変化がなかなか起こらない業界ですし、上述したように玉突き人事の世界ですから、しばらくは慣例的に採用することになると思います。

 

 

 

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