私大職員の待遇を調べてみた:立命館大学 編

関関同立の3校目は、立命館大学です。この4校の中では唯一、本拠地以外の府県でキャンパス(サテライトを除く)を展開している大学でもあります。立命館単体では大阪、滋賀ですが、学校法人立命館が運営する立命館アジア太平洋大学を含めると、大分にもキャンパスがあることになります。最近大阪キャンパスを開設し、今年から食マネジメント学部が開設されるなど、勢いがあるように見えます。余談ですが、最近は農業系を志向する女子学生が増えているというデータをもとに、関西圏では次々に関連学部が開設されていますね(2015年開設:龍谷大学 農学部、2018年開設:立命館大学 食マネジメント学部、2020年開設予定:摂南大学 農学部)。看護ほどとはいかないでしょうが、今後のトレンドとなるのかもしれません。

乗りに乗ってる立命館ですが、業界では教職員と法人側の一時金争いが記憶に新しい人も多いかもしれません。訴訟の結果、教職員側が7分勝ちくらいをおさめたようですが、待遇についてはあまりよくない…という風の噂を聞いたことはしばしばあります。
そんな立命館大学、職員の待遇はどの程度なのでしょうか。

 

独断と偏見による総合評価

休日 給与水準 将来性 総合評価
A

・×は1点、△は2点、○は3点、◎は4点。
・合計11-12点→S評価、9-10点→A評価、7-8点→B評価、5-6点→C評価、3-4点→D評価。
・その他様々な理由で増減あり。

以下で詳しく見ていきます。

 

基本データ

大学名 立命館大学
大学公式HP http://www.ritsumei.ac.jp/
学部学生数 33,115人(男21,023・女12,092)
専任教職員数 1,946人(教員1,346名・職員600名)
ST比・SA比 ST比 1:24 SA比 1:55
人件費率 49.1%
資産額 約3,687億円(内、流動資産345億円、特定資産1,034億)
負債額 約451億円(内、借入金等192億円)
寄付金等収入額 約7億344万円
私立大学等経常費補助金額 約60億1,353万円(全体5位)

・立命館大学ホームページ「情報公開ページ(2017年度)」より。
・寄付金額は2017年度事業活動収支計算書より。
・私立大学等経常費補助金額は私学事業団ホームページより。(平成29年度分)

 

職員待遇に関するデータ

年間休日日数 134日(週休二日制 年末年始・夏期休暇)※2017年度実績
勤務時間 9:00-17:30 (週実働37.5時間)
22歳(学部新卒)年収 約421万円(月給21万2000円、住宅手当15,000円、賞与6.1ヵ月+10万円?
24歳(院新卒)年収 約461万円(月給23万4000円、住宅手当15,000円、賞与6.1ヵ月+10万円?
30歳予想年収 約652万円(月給30万円、扶養手当40,000円住宅手当20,000円賞与6.1ヵ月+10万円?
35歳モデル年収 約793万円
45歳モデル年収 約979万円

・立命館大学ホームページ、各種組合データ等より。
・30歳予想年収は、配偶者+子ども1のケース。
赤字は推測です。計算ロジックはコメントをご確認ください。

 

競争力に関するデータ

偏差値 71~63
入学定員充足率 1.04
収容定員充足率 1.08
退学率 7.9%~1.4%
就職率 89.0%(就職5,265人/(卒業6,885人-進学972人)
有名企業就職率 23.9%(全体38位・私学19位)

・偏差値は進研模試ホームページより。
・入学定員および収容定員充足率、就職率は立命館大学ホームページ「情報公開ページ(2017年度)」より。
・退学率は読売教育ネットワーク「大学の実力」より。(学部単位)
・有名企業就職率は大学通信「「有名企業への就職率が高い大学」トップ200」より。

 

コメント

立命館大学は、採用ページに学部新卒と院新卒相当の基本給および住宅手当の額が掲載されている他、一時金額が過去に訴訟になった経緯から、大々的に6.1ヵ月+10万円という高い賞与倍率が情報として見つかりました。法人側は、この倍率を1ヵ月減としたかったようですが、裁判で認められなかったため、今回はこのままで計算しています。

14年かけた布石(下げるぞ下げるぞ言い続けた)をうった賞与カットですら、経営状況から妥当性が無い、と却下されるのですから、将来的に安定した収入を得るには、やはり大学の経営状況は重要ですよね。基本的に、大学は学生が集まっていれば、もともと収支構造がいびつか、あるいはよほど大きなことをしない限り、事業の継続が可能なわけです。就職先としての大学選びでも、学生に人気がある大学を選ぶのは鉄則です。

 

休日について

さて、待遇がよろしくないと噂の立命館でしたが、年間休日数が134日もあり、1日の労働時間も7時間半と決して長くありません。と、いうよりかなり余暇はあるほうだと思います。“完全”週休二日としていないあたり、土曜勤務もありそうですが、134日という休日数から代替の休みがもらえる可能性もありそうです。

 

基本給・賞与、各種手当について

給与水準も、関関同立のなかでは一番低そうな感じですが、それでも他の大学に比べて高水準であることに違いはありません。22歳から24歳の昇給額は22,000円なので、若いうちは、ヒラでも毎年20万弱年収がアップしていく計算になるでしょうか。この計算でいくと35歳は680万ほどになるので、モデル年収に110万届きません。

35歳モデル年収は、配偶者+こども2名、役職手当および超過勤務なしの条件で計算されているものと思いますので、恐らくこの110万の差が扶養手当や住宅手当の増額?(世帯主・同居家族なしで15000円ですので、同居家族がいれば増える可能性あり)によるものと推測できます。扶養手当や住宅手当は賞与の算定基礎になることが多いため、配偶者25,000円、こども15,000円×2、住宅手当増額5,000円と高めに見積もると、60,000円×18.1=108万6,000円で、大体合う感じでしょうか。

 

将来性・その他について

賞与カットの訴訟があった過去は、裏を返せば理不尽な待遇悪化には立ち向かう風土があるということですし、経営者的にもトラウマとなって、今後は給与カットに及び腰になる可能性があります。火のないところに煙は立ちませんので、待遇が悪いと言われる理由もあるのだと思いますが、将来性や学生募集の安定感を考慮すると、十分魅力的なレベルです。

個人的に気になるのは、複数キャンパスがある上に、キャンパスを限定した採用をしていないことと、役職者が比較的多いことですね。県内に複数ならまだしも、京都、滋賀、大阪と近畿だけでも府県をまたぎますので、通勤時間が長くなったり、あるいは単身赴任となる可能性も出てきます。大学を超えた異動もあるようなので、立命館アジア太平洋大学に勤務となると、大分になりますので、確実に転居しなければなりません

役職者数については、課長補佐以上が全職員の4割を超えています。筆者の大学では、課長補佐以上の役職者数は、せいぜい2割強といったところなので、やや多いように感じます。キャンパスが複数あるが故だとは思いますが、超過勤務抑制のためにどんどん役職をつけているという可能性もなきにしもあらず…です。本来は課長補佐や課長は厳密な意味での役職者ではなく、超過勤務の申請を行うことは可能かと思いますが、管理者の一員である以上、言い出せない雰囲気はありそうです。

余談ですが、私は大学職員として勤務するなら、複業しつつ、自分の余暇を楽しむスタイルがいいなと思っていますので、あまり役職にこだわっていません。大学職員の世界では、多くの場合、役職が損をするようになっていますが、このあたりはそのうち別に記事にしてみたいと思います。

 

以上から、かなり高評価ではあるものの、種々の懸念点や過去の経緯を考慮し、A評価としました。

 

*上記評価等は個人的価値観に基づく評価付けであり、大学自体の優劣を論じるものではありません。

 

 

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