スマートレジは本当にスマートなのか?

最近、お店でスマートレジを目にした方も多いのではないかと思います。
私も普段利用しているTUTAYAや妻も大好きなIKEA、近所のスーパーが改装と同時に導入したりと、日常的に利用することが増えてきました。
大手コンビニでもローソンなどが先駆的に実験しているというこのスマートレジですが、本当にスマートなのかどうか疑問に思うことがあります。

今回はそんなスマートレジについて考えてみました。

 

削減しているのはお店の作業量だけ

私は現在のスマートレジについて、ガソリンスタンドのセルフ給油と同じようなものだと認識しています。
つまり、それまで店員が担ってきたサービスの一部を利用者が担うことで店舗側の負担を軽減し、その余力(人件費含む)を利用者に還元してサービスの向上を図る、というものです。
例えば冒頭例にあげたTUTAYAでは、スマートレジで会計するとTポイントが2倍になりますので、利用者の手間はポイントという形でバックされています。

ところで、このようなレジは本当に“スマート”なのでしょうか?
確かに店舗側からすれば、それまで行ってきた接客業務の一部を削減-スマートレジの説明係が忙しそうにしているのをみるとそれも怪しいところですが-できていますが、利用者は対価があることが多いとはいえ、逆に手間が増えています。これは、会計というタスクの役割分担を変えただけで、作業量の削減が全くできていないことが原因だと思います。仕事でいえば、自分の仕事を他の人の押し付けて自分は早く終われるようになりました!と言ってるようなもので、これではスマートどころか、「こいつ仕事できねーな」と言われるのがオチです。仮に、押し付けた相手に後で労って飲み代を奢って(余力の還元)あげたとしても。

本当のスマートなレジといえば、少し前に話題になったAmazon Goでしょう。
これは、会計のうち“商品のチェック”と“清算”というほぼ全ての作業をIoT機器によって省略しており、店舗側だけでなく利用者の作業量も削減されています。そればかりか“会計待ち”という時間的拘束も解消しているので、これぞまさにスマートレジ-もはやこうなるとレジという概念はなくなりそうですが-に相応しいと言えると思います。

これに対して日本のスマートレジは、前向きに利用者にタスクの転嫁ができうる“スマートレジ”を謳って、少しでも人件費の削減をしたいという企業側の一方的な思惑しか感じられないのが残念なところです。先日改装された近所のスーパーでは、商品のチェック後、レジ横の精算機に利用者がお金を入れることで清算する仕組みになっていました。利用者の作業量としては、お金を店員に渡すのと精算機に投入するのはそこまで差がある訳ではありませんが、店員が担ってきたサービスを肩代わりしていることに代わりはありません。そして、レジ打ち後、ぽつんと暇そうにしている店員をみると、ふと「やってくれたらいいのにな」と思ってしまう小物の私がいます。こんな状況ですら、お客様の利便性向上のためにスマートレジを導入しています、と堂々と宣伝しているのをみて、Amazonの“利用者の利便性向上を追求する企業姿勢”との差を痛感したのでした。

 

今後のスマートレジの行方

ただ、Amazon Goのような先駆的なサービスを提供するには、最先端のカメラ技術や顧客リストとの連動化といったお店側の努力だけでなく、電子決済が当たり前になる風土が必要で、現金主義の日本ではなかなか根付きにくいものであるのかもしれません。そうすると、このような宙ぶらりんのスマートレジが日本独自に発達していきそうな気がしてなりません。

最近のゲームや電化製品などは、説明書がいらなくても直感的に作業・操作できるのが常識です。日本のスマートレジでは、スマートレジ指南係が常に待機してあれこれ説明してやっと機能している状況で、これが普及するのはなかなか難しいのではないかと思います。

携帯がiPhoneに駆逐されたように、日本でしか通用しない文化はそれが馴染んでいる間はよいですが、いざ革新的なサービスがやってきた場合、それに対抗するのは至難の業です。Amazon Goはどう考えても会計技術の最先端を走っており、便利で、本当に“スマート”です。私も日本人ですから、アメリカ企業に日本市場を牛耳られるのはあまり良い気分にはなりませんが、残念ながら、今のところ太刀打ちはできなさそうな印象です。

携帯や再生機器と同じ轍を踏まないように、日本企業の努力に期待したいところですね。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA