2019年度から、短期大学に続く55年ぶりとなる新たな学校、専門職大学がスタートします。大学職員を目指す方の中には、この専門職大学への就職を検討されている方もいるかもしれません。ですが、社会的にはまだまだ認知されておらず、大学関係者ですら(私を含めて)よくわかっていない部分が多いのが現状で判断に困りますよね。
そんな専門職大学への就職について考えてみました。
専門職大学>大学となることはまず考えられない
過去の記事でも言及してきましたが、大学は社会的な実績の貯金(=ブランド)が大きな価値を持っています。逆に言えば、新設の大学はよほど奇抜なことをしたり、成果を出さなければ高い評価を得ることが難しい業界です。もちろん、そういった例がないことはない(立命館アジア太平洋大学、国際教養大学、大和大学など)のですが、数多くある新設大学のごく一部です。一般論でいえば、設立年数と社会的評価は比例します。
AIなどの技術革新によって、こうした“古い”考え方はどんどん淘汰されていくのだと思います。しかし、私は教育に限っては、こうした古い考え方が生き残る可能性があると考えています。
専門職大学は、実務家教員の割合を増やし、企業内実習を義務付けるなどして、大学よりも社会で役立つスキルを重視しているように見えます。しかし、役に立つこと=社会にとって必要なことは、いずれAIやロボットが全部やるようになるのです。そうなると求められるのは、人間味の部分、つまり役に立たないことで、こうした社会ですぐに役に立つとは言い難いことを追求できるのが大学です。
こうした理由から、大学はその役に立たなさがゆえに、将来的にも専門職大学より価値あるものとみなされ続ける可能性が高いと思います。社会的にそうした認知が続く限り、進学率も大学>専門職大学であることは間違いなく、それは職員としての安定性に直結します。したがって将来性としては、大学に分があると思います。
専門職大学職員のメリットとデメリット
とはいえ、すべてにおいて大学職員の方が上かというとそうでもないと思います。
一部の職員は、事務職員のことをアメリカの大学に習ってアドミニストレーターと呼び、クリエイティブな仕事をすべきと主張していますが、そうはいって基本的な業務はルーティンであり、企画も前年踏襲型が好まれます。大学自体が閉鎖的で変化を嫌う傾向があることを以前書きましたが、それがまさに理由です。一人が声を大きくあげても、多勢には勝てず、結局、周りに合わせる形の仕事になってします。
専門職大学は、新しい学校のカタチを一から築いていく創造的な仕事になると思いますので、仕事に目新しさ・やりがいを求める人には向いているかもしれません。
他にも、4割以上を実務家教員にする、というのもポイントです。大学教員はいい意味でも悪い意味でも変人が多く、それが大学の価値を生んでいるのは確かなのですが、やはり仕事のパートナーとしてはやりにくいです。それに対して実務家教員は基本的に組織人でしょうから、仕事上のやり取りで発生するストレスも少ないかもしれません。
一方で、専門職大学は大学に比べ業務量が多くなることは想像できます。大学の業務がルーティン化されているという事は、逆に頭を使う必要がないわけで、極端な話、日付を変えれば企画書や資料がほとんど出来上がることもあります。こうした蓄積がない分、専門職大学職員の労働時間は、大学職員よりも長くなる可能性はあるでしょう。
安定した志願者を確保するまでは、オープンキャンパスなどで休日に出勤する機会は大学より多そうですし、社会的認知が高まるまでは広告宣伝費にお金を割く必要があり、従業員に還元されるお金の量も大学の方に分がありそうです。
教育の業界が好きで、新しいことにチャレンジもしてみたい人には専門職大学は向いているかもしれませんが、安定と待遇を求めて大学職員を目指す方にとっては、あまり向いていないかもしれませんね。
まとめ
ということで、非常にざっくりですが専門職大学への就職についての雑感でした。
2019年にも数校が開校し、その後も続々予定されていますが、多くが医療(主に看護・福祉)などの分野で、一定の需要が見込まれると同時に、大学も諸手を挙げて進出していますので、競合も多い分野です。大学よりも短期間(=授業料が安く)で看護師などになれる、といったメリットを捨てての挑戦ですので、どの程度志願者を確保できるか注目であると同時に、就職先選びの指標にもなります。
成功する専門職大学も出てくるでしょうが、大失敗した法科大学院の例もありますし、短期大学から4年制大学へ移行した大学は軒並み苦戦してますから、新しい学校を軌道に乗せるのは相当大変です。
こうしたチャレンジを楽しめる方は専門職大学はアリですが、そうでないなら、一般の大学を目指す方がよさそうですね。
コメントを残す