転職業界では人気ナンバーワンとも言われる大学職員ですが、新卒市場でもその人気は高いようです。
そこで現役職員の端くれとして、どうやったら狭き門を潜り抜けられるかどうか、アドバイスできればと思います。当たり前の内容も多く書かれていますので、必要なところだけでも活かしてみてください!
求人情報の調べ方
大学職員の求人も、一般企業の求人と調べ方に差はありません。
個々の大学のHPで採用情報を検索してみたり、リクナビ・マイナビで調べたりするのが一般的です。リクナビやマイナビで調べる際は、フリーワードに「学校法人」を入れ、職種を一般事務などにするとかなり絞って見ることができます。
一般の会社では会社名=運営主体であることが多いですが、大学の場合は学校法人〇〇の運営する△△大学という形になります。法人によっては複数の大学を運営することもありますし、幼・小・中・高などの他の学校を運営しているところも多いです。基本的なことなので、押さえておくとよいですね。
その他、私も当時よく利用していましたが、大学職員への道というサイトは現在でも更新され続けており、非常に参考になります。というより、大学職員を目指す人はほぼ全員が見ていると言っても過言ではなさそうなサイトです。求人情報以外にも、過去の試験内容なども投稿されていますので、定期的にチェックするとよいですね。
最後に、意外と見落としがちなのが大学への直接求人です。大学のキャリアセンターの水準にもよりますが、「大学なんてどうせ頼りにならない」と決めつけず、大学への求人情報もチェックするようにしましょう。私が現在勤めている大学は、実はこの大学への直接求人から応募したものになります。
この求人の何よりの利点は、大学で求人情報を見たから関心を持ったと、応募のきっかけをぐうの音も出ないほどに正当化できることです。
大学選びの方法
全国には10万社以上あると言われる会社に比べて、私立大学はせいぜい600校。勤務地などを限定していけば、自ずと選択肢は狭まっていきます。
とは言え、中々選べない!という方もいらっしゃるかと思いますので、いくつか参考になる指標を列挙しておきます。
出身大学を選ぶ
とにかく大学職員になりたいなら、出身大学の応募を最優先にするのが最も可能性が高いです。大学によっては自大学出身者が有利にはならない旨宣言しているところもありますが、基本的にそんなことはないと思います。採用側も人間、そして自大学出身者が多いので、どうしてもバイアスをかけてみてしまうのが理由かと思います。ささやかですが、就職率アップにもつながりますしね(あまり大きな声では言えませんが、昔はどうしても企業に採用されない人の最後の砦だったこともあったとかなかったとか…)。
現に、私の所属する大学でも職員の半数は自大学出身者です。
将来性・安定性を重視して選ぶ
出身大学以外にも選択肢を増やしておきたいという人は、①三大都市圏所在、②収容定員4,000人以上、③総合大学を条件にしてみるとよいでしょう。
①三大都市圏所在、②収容定員4,000人以上
これらはほぼ重なるのですが、経営的に安定する最大の要素だと思っています。これについては以下の記事でもまとめていますので、参考にしてみてください(具体的な大学名も載せています)。
私大職員を目指すなら収容定員4,000人以上の大学にいくべき説
➂総合大学
これは、単科大はどうしても景気・その他の要素に志願者数を左右されることが理由です。
一般的に、現在の様に景気が良い(ように見える)と「文高理低」、つまり文系学部の人気が高くなり、理系や専門系学部は人気が低くなる傾向があります。反対に、景気が悪くなれば「文低理高」の傾向がみられます。他にも、世の中のトレンドが変わり、同じ文系の中でも特定の学部が人気になったりすることもあります。
そして、前年度倍率が高くなった学部は次年度敬遠され、倍率の低かった学部にはワンチャンあり!と見込んだ学生が応募してきて志願者が増える、といった傾向もよくみられます。
こうしたリスクを、複数の学部を設置することでヘッジできるのが総合大学の強みと言えるでしょう。
人間関係・雰囲気を重視して選ぶ
大学は一般的な企業に比べて、閉鎖的な傾向にあります。そんな中では、人間関係や雰囲気は長く勤めるために特に重要です。安定性や給料だけ良くて、精神が疲弊してしまっては元も子もありませんので、この点もできる限り事前リサーチをしておくことおススメします。
特化型大学は避ける
類は友を呼ぶと言いますが、大学は学部によって同じ考え方を持った人が集まりやすい傾向があります。単科大学の場合、その雰囲気に馴染めればよいですが、そうでないなら互いに牽制することで均衡が図られる総合大学の方がやりやすいでしょう。特に医科系大学では職員軽視の傾向が強いと言われており、職員としてやっていくのは中々しんどいかもしれません。
他にも、女子大学は明らかに女性社会です。うまくやっていける人は別として、男性職員は少し肩身の狭い思いをすることがあるかもしれません(この点は、普段から女性が感じられていることかもしれませんが…)。歴代の学長や事務局長などの多くが女性であった場合、出世への影響も少なからずあるでしょう。
新卒募集を行っていない大学は避ける
新卒のための記事で何を言ってるのか分からないかもしれませんが…w
大学によっては、新卒採用はほとんど行わず、中途採用中心の大学もあります。理由は様々ですが、主には自分たちで育成しきれないこと、そして中途採用者が幅を利かせていることが原因です。
こうした大学では、中途採用者を中心とした「大学の中核を担ってるという使命感」を持ったメンバーによって牛耳られていることが多く、こうした選民思想をもった方々は、大学でありがちなゆるやかな職場環境を忌み嫌う傾向があります。
裏を返せば、中途採用者の活躍の幅が広いという事で、転職向けの大学ではありますが、新卒採用者がたまに出た求人に飛びつくと、痛い目に遭う可能性があります。
理事会が強い大学は避ける
こうした情報はあまり表には出てきませんが、理事会と教職員(組合)が対立している大学では、理事会から理不尽な要求を強いられたり、無理な目標を掲げられて職員が疲弊している可能性があります。
とは言え、組合が強すぎる大学では、待遇こそ維持される可能性が高いものの、座して死を待つというか、瀕死の状況でも改革を行えないという本末転倒な状況に陥っている場合もあります。どちらもほどほどに、均衡を保っている大学がベターと言えるでしょうね。
福利厚生・待遇で選ぶ
これが最後か!と思う方もいるでしょうが、ここまで見てきた条件で見ていけば、それほど悪い待遇の大学はないと思います。
待遇面では、大学は土曜出勤があることが多い職種なので、土曜出勤の有無は最重要チェックポイントです。完全週休二日とそうでないのは、雲泥の差があると思います。他にも、GW、夏季・冬季の長期休暇をどの程度とれるかは、過去のアナウンス等で推測できるので、確認しておくとよいでしょう。
手当に関しては、住宅手当、扶養手当はあることが一般的なので、その有無そして水準をリサーチしておきます。住宅手当は20,000円、扶養手当は配偶者15,000円、子ども10,000円以上が高待遇の水準と言える気がします。
大学は年功序列の事が多いので、学部新卒と院新卒の初任給の差もチェックしておくとよいでしょう。これが25,000円以上=1年で12,500円以上の昇給があることが、感覚的に高待遇のラインです。
新卒における志望動機の考え方
大学職員だけでなく、一般企業を含めて志望動機を考えるのはとても難しいです。そんな中でも、大学はサービスに劇的な差がある訳ではないので、「その大学でなくてはならない理由」を書くことは至難の業だと思います。
母校愛は最強の志望動機
そんなときにすべての論理を飛び越えて感情的な主張がまかり通ってしまうのが、「母校だから」というものです。これほど明確で、説得力のある理由はありません。
大学はそのベクトルは様々ですが、社会に役立つ人材の育成を使命としています。その使命によって育成された人が「それを再生産することに魅力を感じる」という主張は、その大学にとって成功以外のなにもでもなく、それを否定することは自大学を否定することにもなるので、ぐうの音もでないということです。
自大学への就職は、こうした点からも有利であると言えるわけです。
身近な例で志望動機を組み立てていくのが簡単
では、出身ではない全く違う大学への出願にあたっては、どうすればよいかという話が問題になってきます。
良くあるのが、友達の出身者をネタにするパターンです。その大学出身者の友人・知人を思い浮かべ、彼らの特徴や良い点を挙げていきます。そうして、彼らに共通する優位性をまとめ、それを大学のミッションや教育ビジョンと照らし合わせ、その方針に共感を寄せるという手法です。
(例文)「私は様々な大学出身者の集うサークル(バイト)に所属しております。そこでは考え方の違いもあってか、意見や衝突が頻繁に起こるのですが、常にその仲介役として皆の意見をまとめ上げ、チームの雰囲気を向上させる力をもった方がいます。それは、貴学在籍の学生なのですが、思い起こせば、経験上、貴学出身者にはそうした素養をもった学生が多いように感じました。その点に興味を持ち、貴学の教育ビジョンを調べてみると「〇〇」という考え方が、彼・彼女に息づいているのだと感じました。こうした素養は、多様な立場・考え方を持つ方と協働する必要がある今日のグローバル社会において大変に有用であり、それをもつ人材を輩出する貴学の社会的貢献度は高いものと感じ、これに携わることに魅力を感じました。」
これはかなり雑な文章ですが、方向性としてはこのような感じでしょうか。
母校のくだりと共通ですが、母校のミッションも在籍者・卒業生も否定はできませんので、これについては面接側も「そうですか。ありがとうございます。」としか言えないという訳ですね。
教育業界の展望について本気で考えて志望動機を考える
こうした身近な例を挙げられない場合は、割と高尚な理論を組み立てる必要性が出てくると思います。
高偏差値帯の大学であれば、日本の大学の世界ランキングや日本企業の競争力低下などを挙げて、これからの高等教育では何をなすべきか、そしてその(志望する)大学はどのような役割を担うべきか、とか。
あるいは、地方の大学であれば、東京一極集中と地方創生に絡み、高等教育機関としてその地域で果たす役割は何なのか、とか。
これらを自分の考え方や得意とすることと紐づけて説明できれば、「職員さんに優しくしてもらって、学生を支える仕事に魅力を感じました!」レベルの学生とは差をつけられるでしょう。
その大学の中長期計画や自己点検報告書をチェックしたりするのも有効ですし、大学業界でホットなワードをちりばめると「こいつ勉強してるな」と思われることでしょう。これについては以下の記事でもまとめていますので、参考にしてみてください。
私大職員を目指すなら押さえておきたいキーワード一覧
最後に
正直なところ、私も「君はマイナスポイントがなかったから」というふざけたような理由で採用された口ですので、偉そうなことは言えません。
ですが、10年以上勤めてきて見てて来た部分というのもあります。それは、どの大学でも「現状ではダメだ」という不安が浸透しているということです。であれば、この不安を突いてやればいいのです。
教育業界はもう何十年も前から旧態依然のやり方に、今どきワードを盛り込んで自己満足に陥っている状況で、創造的破壊は全くと言っていいほど起きていません。そしてそのブレイクスルーは、大学自体ではなく、国あるいは民間の会社が引き起こしてくれるという、甘い考えが蔓延しているように思います。
それを、少なくとも可能性として「こいつやってくれるかも…」と思わせることができれば、きらりと光る人材に見え、採用の可能性が高まるかと思います。
実際のところ、採用は縁、運の要素が大半かと思いますので、これ通りにやれば採用確実という訳ではありません。しかし、少なくとも可能性を高めることはできると確信しています。
これから私大職員を目指す方は、ぜひ頑張ってみてください!
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