住宅ローンにまつわる広告

先日、我が家にとある不動産屋のチラシが入っていました。不動産屋のチラシは頻繁に入っているので今回もスルーして捨てようかと思ったのですが、今回は「住宅ローンが通らない人」向けに、こんな人でも通ってるからあきらめないで!という内容だったので、ちょっと興味を持ってみてみました。

今回の内容は、シングルマザーの方の中には気分を害される方がいるかもしれません。なので、該当されるようでしたら、読まれないことをお勧めします。

 

年収260万のシングルマザーが2000万越えのローンを組むという内容

チラシでは、以下のケースが想定されていました。

・シングルマザー35歳(子どもの年齢不明)

・年収260万円

・借入金2,100万円(35年ローン)

・金利0.62%の頭金なし、ボーナス払い0円

・月々の支払金額は55,000円強

 

年収260万円が額面か手取りか不明なのですが、額面だと仮定します。税額についてはシングルマザーは寡婦控除などがあり、かなり手厚くなっています。なので額面260万でも、子どもが1名の場合、手取りは210万円程度にはなるようです。

今回のケースでは賞与があるかどうか不明だったのですが、無いと仮定すると月額の手取りは約175,000円。これが生活の基盤になります。

母子家庭の場合はここに児童手当(10,000円~15,000円)と児童扶養手当が加算されます。児童扶養手当の満額は子ども一人の場合42,000円強ですが、260万円ほど年収があると月額16,000円程度になるようですね。

母子家庭の場合、子どもが小学校にあがると就学援助の対象になる可能性がありますが、2人家庭の場合は220万程度以下が対象になることが多いようです(自治体によります)。なので、260万円という数字は微妙なラインで、もらえないことを考慮する必要があります。

ということでまとめると、手取給与175,000円+児童扶養手当16,000円+児童手当10,000円~15,000円の計201,000円~206,000円が月々の収入になることになります

ローン返済額の収入に占める割合は27%強で、フラット35の貸付基準である30%を下回るので、ローンが降りる可能性があるということですね。

 

貸す側は本当にリスクを考えているのかどうか

これをみて、私はまっさきに「大丈夫?」と思ってしまいました。

まず、35歳で35年のローンを組むということは、完済は70歳ということになります。定年が伸びたとはいえ、65歳には退職するケースが多いと思いますので、残る5年は年金や預貯金などでやりくりしなければなりません。

また、0.625%という金利は、現在の水準を見る限り、恐らく変動金利を指していると思います。今後金利が上昇していった場合、例えば1%金利が上がれば月額の返済額は+1万円程度になると思いますが、そうなると一気に返済比率が32%となって危険水域に到達してしまいます。

他にも、子どもが成長して児童扶養手当等の対象からはずれた場合、年収が上がらなければ月額175,000円で生活しなければなりません。そうなると返済比率は31%を超えるので、これまた厳しいラインになってきます。

そうでなくとも、現役中はローンを除いた月額手取り15万円ほどの中から、水光熱費や通信費、食費や雑費の他、補助が手厚いとはいえ教育費を支出した上に、将来の自分のための老後資金を貯める必要がある訳で、かなりカツカツになることが容易に想像できます。不動産を買う訳ですから、固定資産税も当然にかかってきます。

 

シングルマザーは家を買うな!と言っているわけではありません。単純に、年収260万円で共働きによる収入増を望めない家庭に、2000万越えのローン融資事例をでかでかと掲載するのは無責任ではないか、と思う訳です。

もちろん、収入がどんどん増加していく可能性、再婚する場合、離婚が原因なら養育費があるケースなどがありますので一概には言えませんが、チラシの事例はかなりリスクが高いなと思ってしまいました。

不動産屋からすれば、買ってもらえて売買手数料さえもらえれば、その後の家庭がどんな人生を送ろうが知ったこっちゃないということかもしれませんが、買った方はそこから生活がスタートします。

そんなとき、こうした将来のリスクを見越したうえで相談に乗るかどうかで業者のカラーが分かってくると思います。需要があることは認めますが、正直、こういう広告をうつ不動産屋はあまり信用できませんね。

 

一戸建て(マンション)購入は贅沢という感覚を持つべきでは

新築信仰が強く、中古不動産市場が未成熟な日本においては、自宅の購入というのは贅沢に他ならないと思っています。

冷静に考えれば、35年もの長い間、日本という災害大国で災害を恐れながら、将来的には無価値になることが確実なものに、(安くなったとはいえ)高い金利を払って何千万円ものを借金をすることは、合理的な選択ではありません

ですが、家を所有する満足感(安心感)というのは、脳みそではなくて心に訴えかけるのもまた事実です。人間は所有することに快感を覚える動物だと思っていますので、そうした感覚がその人に良い影響を与えるのであれば、それはそれでよい選択だったと言えるのかもしれません。

かくいう私も、生涯賃貸でもOK派だったのですが、妻は持ち家が欲しい!という考えでしたので、そこは彼女の意見を尊重することにしました。いざ買ってみると確かに満足感はありますし、賃貸よりも広さも自由度も格段に上なので、その点はよかったと思っています。

ただ、贅沢品という感覚は捨てきっていないので、返済比率は私の収入だけで手取り金額の20%以下に抑えていますし、定年までに完済する期間に設定しています。現在の仕事である大学職員は、今のところ年功序列で収入は増加していく予定ですし、妻もいざとなれば働きに出れますので、だいぶ固い選択をしたとは思っていますが、それでも不安がないとは言えません。

もちろん、最悪のケースばかり考えていてもしょうがありませんし、人生なるようになるという考えもありますが、私のような小心者には、住宅ローンはかなり大きな決断でした。

中流家庭にある人たちは、住宅購入の際「せっかくだから…」と、つい背伸びをして5000万円、6000万円といった高額な物件に目が行くかもしれませんが、冷静に考える必要があると思います。借り入れが1000万円増えると、返済額は月3万円ほど増加します。その3万円は、生活の質や将来の余力を確実に下げてしまうでしょう。

魅力的な立地、豪華な内装などはその時はとても魅力的に映りますが、住んでしまえばその時の胸の高鳴りは確実に減っていくと思います。逆に、少しくらい不満があっても、住めば都の言葉通り、解釈次第でいくらでも楽しく生活は可能です。

繰り返しますが、基本的に持ち家は贅沢品です。中流家庭にある我々は、そのことを忘れず、つつましく生活したいものですね。

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