組織で仕事をしている以上、上司との関係は切っても切れないものがありますが、個人的にうっとおしいのは意識高い系の上司です。もう少し補足をすると「自己啓発本に乗っていそうなフレーズ」を発言の随所に散りばめて、上司という立場&いかにもな正論を振りかざしてくる上司、とでも言えましょうか。
今日はそんな上司が使いがちなフレーズ「給料もらっている以上プロだから」発言をピックアップしてみます。
そんなこと言ったって…部下の言い分
この発言は、部下が「これは専門的な人の意見を聞いた方が…」的なニュアンスの発言をした際に繰り出されることが多いです。
多くの上司は「今のポジション(役職)にいる以上、あなたがそれを担当する専門家(プロ)なのだから、泣き言を言ってないでやれ」というニュアンスで言っているので、部下としてはイラッとくる発言です。
上司としては部下の責任逃れな態度への戒めとして言っているのかもしれませんが、この発言(部下)の背景には、
1.部下自身の能力(知識)が乏しいこと、
2.自ら習得するよりプロに任せるほうが効率がよいこと、
の2点がある思っています。
大学という職場構造の弊害
例えば、大学職員の世界では異動によって転職レベルで仕事内容が変わります。
学生の就職支援を担当していたかと思えば、国際交流の現場で留学生を対応することになったり、教員の研究を支援する部署で科研費の申請を補助したりと、それぞれの現場で要求される能力は全く違います。
もちろん、その部署に配属された以上はそれぞれの業務に関する知識・能力を習得することは必要ですが、専門職ではなく総合職として頻繁に異動がある以上、その能力にムラが生じるのは仕方ありません。
これは本人の問題というより、構造的な問題です。
ジョブルーチン的異動では専門家に太刀打ちできない
さらに、個々の業務専門性がどんどん高くなっているのも現代の特徴なのではないでしょうか。
ここ十数年ですら、大学では時代のニーズに合わせて、情報センター、キャリアセンター、国際センター、ライティングセンター、IR担当といった多様な部署が新たに作られ、それぞれ専門性のある業務が求められています。
そんな中で、数年で異動する専任職員が専門性を磨くことはかなり難しいと言わざるを得ません。そもそも、上記に挙げた部署はそれぞれ専門の企業があって切磋琢磨している状況ですから、付け焼刃の知識と経験で太刀打ちできるはずがないのです。
大学の世界ではプロ任せが横行している現実
そういった訳で大学事務の業界では、専門性が高い領域を中心に仕事のパフォーマンスを一定に保つべく、業務委託、つまり専門家に委託するという選択をとることがかなり多いです。
例えば就職支援では、面談、キャリア教育、SPI対策講座などを実施していますが、ほとんどの大学はこれらをマイナビやリクナビといった会社に委託しているのではないでしょうか。企業の善し悪し(学生への紹介有無)を判別するのに、帝国データバンク頼みというところも多いでしょう。
一部の大学ではキャリアカウンセラーの資格を取らせたりするなどして、これらを専任職員が担当しているケースもありますが、資格を取得しても異動してその後二度と戻ってこないことも多いので、効率は悪いと言わざるを得ません。
他にも、広報担当でも、HP制作から刊行物に至るまで業者に丸投げで、自分たちは校正だけといったことはよく聞く話です。情報センターや図書館なんかは、完全に外注して業者しかいないみたいな大学も結構あります。
事務だけでなく、本丸の授業でも大学は非常勤講師によって成り立っている現状を考えると、大学は外部委託のオンパレードと言えます。
ですので、「既にプロ任せしまくってるじゃん!」という感覚になっちゃうわけですね。
大学職員は何のプロ?
頑張って自分でできるようになる人より、できる人を知っている人の方が出世するとはよく聞きますもんね。
自分だけの力ではなく、周りを巻き込んで仕事をする方が大きな成果が出せるのは当然だと思いますし、大学の様に多様な業務を高水準で実施するためには、プロ任せは合理的な選択だと思います。
ただ、プロ任せについては、どうしても自分たちにノウハウが残らないという不安を抱く人が出てきます。
冒頭の台詞を言ってくる上司はこのプロ任せ不安症の人たちが多く、「自分たちの大学に相応しい企画・サービス等は自分たちしか作れない」という根拠のない理由で部下を疲弊させることが非常に多いと思っています。
私がこの上司たちに聞きたいのは、本当に自分たちだけでやることが正しいのか?ということです。
自分たちでやることが本当に正義なのか?
自分の頭で考えることが大事というのはよく言われます。
一見正しいですが、果たして、その考えの方向性・ベクトルは常に正しいのでしょうか。自分たちで考えたという自己満足に陥ってはいないでしょうか。その結果として、仕事のパフォーマンスが低下してはいないでしょうか。
任せれることは任せればいいんですよ。
大学職員は比較的給料が高いので、無駄な人件費は削って業務委託費に充てたほうがよっぽど効率的な運営ができると思います。財務的にも固定費を流動費にできるので、一石二鳥です。
私は“プロ”専任職員(総合職)に求められるのはニッチな専門性ではなく、自分たちでやるべきこととプロ(業者等)に任せることの判断を行い、任せたことを取りまとめて管理・運用できるマネジメント能力ではないかと思います。
長くなりましたが、その任せるべきと判断したことに対して「プロ意識をもって自分でやれ!」というのはナンセンスですよね、というのが今日言いたかったことですw
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